「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」より〈特定財産承継遺言に基づく相続登記の申請人〉【登記実務の変更点①】

query_builder 2024/05/28
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平成30年の民法改正により相続登記の取扱いが一部変更されましたが、昔からある執務参考図書などを繙いていると混乱することがありますので、変更点を改めて確認したいと思います。

今回は、令和元年6月27日付け法務省民二第68号法務省民事局長通達の中で相続登記の申請人の取扱いが一部変更された件について順を追って見てみたいと思います。


⑴ 特定財産承継遺言

遺産の分割方法の指定として遺産に属す財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言については、従来いわゆる「相続させる旨の遺言」と呼ばれていたところ、改正後の民法(以下「法」という。)第1014条第2項中「特定財産承継遺言」と定義されました。


⑵ 遺言執行者の権利義務

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し(法第1012条第1項)、遺贈については遺言執行者以外の者の履行が排除されました(同条第2項)。

なお、この規定は、改正法施行日(令和元年7月1日)以前に開始した相続であっても、同日以後に就職した遺言執行者には適用されます(改正法附則第8条第1項)。


⑶ 遺言執行者の地位

改正前の法第1015条で「相続人の代理人とみなす」と規定されていたところ、改正後の同条では「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接効力を生ずる」と改められました。

遺言執行者を一般に相続人の法定代理人と解釈する点は従前と変わるところはないようですが、遺言執行者の職務が遺言の内容を実現することにあるという法的地位の明確化をするための改正でした(「一問一答新しい相続法」P113)。


⑷ 法定相続分を超える部分について対抗要件が必要となる

相続させる旨の遺言により承継された権利については、平成11年の最高裁判決により登記なくして第三者に対抗することができるとされていました。

しかし、法改正により法定相続分を超える部分は、対抗要件の具備が必要になりました(法第899条の2第1項)。相続債権者や被相続人の債務者が不測の損害を受けないよう配慮された改正となっています。


⑸ 特定財産承継遺言に基づく相続登記の取扱いの変更

従前の取扱いでは、特定財産承継遺言に基づく相続登記の場合、相続人以外は申請人になれませんでした。しかし、法改正により、遺言執行者は、対抗要件具備に必要な登記の申請をすることができるようになりました(法第1014条第2項)。

また、相続人が申請人なることについては、遺言執行の妨害行為(法第1013条第1項)に該当しないことから、従前同様可能です。

なお、法第1014条第2項の規定は、改正法施行前にされた遺言に係る遺言執行者の執行につき適用されません(改正法附則第8条第2項)。


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